家出息子を警察から引き取る

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小田原警察署は合同庁舎の裏にあります。合同庁舎は入り口が閉まっていましたが、警察署は開いていました。

中に入ると、まだ8時前だというのに、既に多くの職員が出勤していました。

「 家出人のご連絡を頂いたので伺いました。 」

応対してくれた警察官に伝えると、家出人の名前を尋ねられました。

「 通報がありまして、湯河原の公園で保護しました。 」

そう教えてくれた警察官は書類を出して来ました。私は言われるままに、サインと印鑑を押しました。

「 息子はどこに居ますか? 」

「 そこの長椅子で寝ています。 」

見ると壁際に置いてある大きな長椅子の上に毛布に包まれて人が寝ていました。私は近寄り顔を覗き込みました。真っ黒な顔をした息子でした。

私が体を揺すると息子は気づき、起き上がりました。そして一言何か言いましたが、私の声が被って何を言ったのか分かりませんでした。

「 おまえ、心配したんだぞ。 」

私は息子の横にドカっと座りながらかすれ声で言いました。目からは涙が出て来そうになりましたが、そこは警察署なのでぐっと堪えました。

 

紺のポロシャツに七分だけのズボン、息子は家を出た時と同じ格好をしていました。顔は日に焼けて黒くなっていました。頬がこけていました。私が握った息子の腕はか細くなっていました。

「 散々電話したのに、どうして出ないんだよ。 」

 

言いたいことが沢山ある中から、どれから話をしたらいいのか一瞬迷ったのですが、私の口から出たのは電話についてです。

「 おまえの電話を見せてみろ。 」

「 落として壊した。 」

「 どこにあるんだ。 」

私は捨ててしまったのかと思ったのですが、バッグの中にあると言います。赤いバッグも薄汚れていました。バッグを開けると中からレシートやメモの切れ端などのゴミが沢山出て来ました。枕にする為のクッションがわりなのでしょうか?

息子が壊したPHS
 
そして出てきたワイモバイルのPHSは、無残にも二つに割られて居たのでした。流石に私はショックでした。息子の心のうちを見た感じがしたからです。ここまでするからには家には帰らないつもりだったのでしょう。

「 これじゃ、壊れたのではなくて、壊したのだろ。 」

それでも落としたら壊れたと言うので、単に落としただけではここまで壊れる筈が無いと教える様に言いました。

「 たたき壊したのだろ。 」

私が強く言うとやっと息子は認めました。PHSを持っていると居場所が分かってしまうと思って壊してしまったのでした。

息子のワイモバイルには位置検索システムの設定はしていなかったのですが ・・・

これではいくらメールを送ったり、留守電登録しても反応がなかった訳です。息子は探し出されて叱られるのが嫌だったのでしょう。私の口からは言葉の代わりにため息が漏れました。

深夜の公園
 

そこに警察官が来て、保護した時の経緯を教えてくれました。深夜に幕山公園の近所の人に不審者がいると通報され、警察がおもむき午前2時過ぎに保護したのだということです。その時、息子は公園内のベンチで寝ていたらしいです。

「 所持金は9円しかありませんでした。 」

財布の中に学生証が出てきて身元確認された訳です。捜索願が出ていたので本署まで連れてこられたという事です。

警察官は私に息子を引き渡しても問題ないと見たのでしょう、私は机が並んでいる所に呼ばれました。その時、私は振り返って息子に言いました。

「 これ食べるか? 」

そして、持っていたキャラメルを箱ごと息子に投げて渡しました。余程、お腹をすかせていたのでしょう、息子は、あっという間に全部食べてしまったのでした。

 
私は警察官に渡された書類にサインをしました。その間に警察官が地元の警察署まで電話をしてくれて、その場で捜索願を取り下げるお願いをしました。そこまですると ・・・

「 お引き取り頂いて結構です。 」

私は息子に、警察官に挨拶をさせて先に警察署の外に出ました。息子は怒られるのを警戒して距離を置いて警察署から出て来ました。

” どうしたものか? ”

私は叱り飛ばす気持ちはありませんでした。息子が哀れでならなかったのでした。今、怒られるのを怖がっている息子を安心させてあげるには、どうしたらいいのか?

私は警察署から数歩、出てきた所で思案したのでした。

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