警察署から戻ると、私は忙しかったです。
警察官から調査すべき事項をいくつか教えてもらったからでした。
本人は家を自転車に乗って出ていました。自転車を探せば、足取りがつかめるかもしれません。ところが、息子がどんな自転車を乗っていたのかはっきり言えないのです。色はシルバーだったと思います。
娘に聞いてみると、やはり色はシルバーだと言います。
「 夜泊まるとすると、どういう所にいるかなぁ? 」
娘に聞くと、マクドナルドが24時間営業していると言います。確かに、安く夜を明かすのにマクドナルドは居やすいのかもしれません。
私が自転車について思い出していたのは、警察官から防犯登録番号を調べる様、教えてもらったからです。確かに自転車は手がかりになりそうです。
自転車を買った店にいけば、教えてくれると言います。一旦家に戻りましたが、すぐに自転車店に行こうとした所に電話がかかってきました。
妻からでした。
「 今、まだ山の上なので帰るのに時間がかかる。 」
急きょ、下山することにしても家に帰りつくのは、日が暮れた頃になると言うのです。本人は携帯電話が通じる稜線に来た時に、ネットをつなげたところ、私からのメールが届いたと言います。連絡手段としてメールはとても有用なのを感じました。
兎に角、妻が帰って来るのは心強く感じました。
妻のことだから、息子が行方不明になっても予定通り、登山を続けると言うのかと思っていました。半ば自分一人で捜索しなければならないと思っていたのでした。
私が自転車店に行くと、その店では防犯登録番号は分からないのだと言います。
協会か登録会か、どこかに問合せする必要があると言います。
「 自転車はいつ購入されましたか? 」
「 中学に入学した時ですから、6年ほど前です。 」
「 6年間、乗っていたのですか? 」
よくもそんなに長い間乗っているなぁ といった言いぶりでした。
息子の自転車はギア段数も多い、結構良い自転車を買ったのでした。本人も新しい自転車が欲しいとは言わずに乗り続けていました。
防犯登録番号が分かったら電話してくれると言うのでお願いしました。
そして私は次に銀行に行ったのでした。息子名義の通帳が一つだけあったので記帳してみることにしたのでした。3月まではコンビニでアルバイトをしていたのは確認とれているので、その分のお金が入っているかもしれないと思ったからです。
但し、その通帳は4月中旬に作られたものでした。ATMで記帳してみると意外なことが分かりました。
その通帳はおそらく妻が1000円を入れて作ったのでしょう。通帳には一行、残高1000円が記載されていましたが、記帳してみると、その1000円が引き出されていました。引き出した日付は、家出の2日前です。
3月にコンビニのバイトをやめているのに、夏休みに入り再び、バイトを行くことになった初日です。おそらく、バイトに行くと言って出かけている間に、1000円を引き出したのでしょう。
・・・ となると、計画的な家出だった可能性が大きくなります。
「 バイトに行ってくるね。 」と言って出ていった息子は、2日前には家を出るつもりでいたという事になります。私に対してどういう気持ちで家を出ていったのだろうか?
息子の表情を思い出している所に、電話がかかって来ました。自転車店からです。防犯登録番号を教えてくれました。
この番号は私に希望を与えてくれました。自転車を見つければ、置いてある店に息子が居る可能性があるからです。私はあちらこちらと自転車を探しに回りました。
家出息子捜索日記
- 失踪当日の出来事
- 息子の嘘のバイト
- 再び嘘をつかなければならなくなった息子
- 行方不明者の届け出
- 家出の手がかり 自転車防犯登録番号
- 息子の自転車を探す
- 自転車発見! 家出の足取り
- 銀行口座の取引履歴を調べる
- どうしてお盆に失踪したのか?
- 個人情報保護法の壁
- 緊張はピークに 息子の失踪から5日目
- 真夜中の東京を家出人の捜索
- 留守録への期待
- まだ息子の帰りを待つ段階
- 失踪8日目に、息子へ送ったメール
- ハローワークが家出や失踪をし易くしている
- 高額の嘘 奨学金の申請
- 失踪者は何をしているのか?
- 失踪者の捜査権がない
- 家出の原因は父親の欠点
- 家族も、学校も、全てを捨てて
- 家出の話をすると気が楽に
- 東京へ家出人捜索に出発
- 家出人捜索開始 池袋にて
- 眠れなかった池袋の漫画喫茶
- 息子の捜索、早朝の山手線を
- 家出人の発見 息子に会いに小田原へ
- 家出息子を警察から引き取る
- 家出の資金4万円が9円になっても
- いよいよ家出息子が帰る時