もし、息子が東京に来ているのであれば、拠点としているのは、渋谷駅か池袋駅近辺であろうと推測しました。両方とも家出した青少年が出没すると言われている場所です。
渋谷のハチ公前に立つと多くの人が待ち合わせをしています。これからお祭りが始まる様な心がざわめく場所です。
ここに居れば何か新しい事が始まる
今までとは違った生き方が出来る
これから素敵な物語が起ろうとしている ・・・
まるで魔法をかけられた様に、そんな錯覚をしてしまう雰囲気があります。
それでも、私はまずは池袋を捜索する事にしました。おそらく、息子は渋谷の方に憧れるでしょうが、既に家出から18日目です。長い一日を過ごす事を考えれば、居心地としては池袋の方に分がある気がしたからです。
ところが、池袋は大変でした。街が大きい!池袋は家出人の捜索には大変な場所です。東口、西口、そしてサンシャインシティとエリアが広いです。
下記の確認しておきたい場所を見て回ったのですが、足が棒の様になりました。
- 豊島区立中央図書館
- 東池袋中央公園
- 東池袋公園
- ハローワーク池袋
- 豊島区役所
- 池袋駅前公園
- 池袋周辺 マクドナルド5店舗
- 漫画喫茶
- コンビニ
捜索の間、泊めてもらう私の実家で父に言われました。
「 砂に落とした針を探す様だ。 」
探し出す事が困難なのは承知で来ています。成果を考えては出来ない捜索です。それでも、実際、探しまわるといくつか分かって来た事があります。それは大きな収穫に感じました。
まず先に中央図書館を探しました。小雨が降る中、傘をささずに歩いていきました。私は帽子をかぶっていたので多少の雨も気にしませんでした。息子も白い帽子をかぶって家を出ました。同じ時間、小雨の中を歩いているかもしれません。
豊島区立中央図書館に行って驚きました。月曜日から金曜日までは夜の10時まで開館しているではないですか!漫画喫茶に泊まる場合、割安料金パックになる時間帯は夜10時又は11時開始になります。それまで時間をつぶすのに良い場所かもしれません。
参照) 豊島区立中央図書館
私は周辺の公園全てにも行きたいと思っていました。事前にネットで調べると池袋に点在している公園に家出人や失踪者が来ているらしいので、どういう公園か見ておきたかったです。小雨が強くなって来ましたので、誰もいないかもしれません。でも、場所だけは確認しておきたかく向かいました。
丁度、池袋駅前公園に着いた時には雨がやんでいました。腰を掛けている人が結構いました。その中には年季の入った失踪者風の人や手持無沙汰にしている若い人もいました。小さな水天宮の祠がありました。その周りに猫が4、5匹居ついています。私は猫の側に座って休憩を取りました。
ボウリング場が真ん前にあり、そこから若い人たちが出てきて楽しそうに集合写真などを撮っていました。都会は遊ぶ友達がいると楽しい所です。でも、一人でいると寂しさを感じます。
重い腰を上げて池袋駅前公園を出た時には夕暮れが始まろうとしていました。私はサンシャイン通りに向かって歩いていきました。だんだん暗くなる日と同じように、私の気持ちも落ち込んできました。息子は今、どうしているのか?私は立ち止まって足早に行き交う人の顔をみていました。
サンシャイン通りには凄い人です。何度もため息が出ました。これでは例え息子が歩いていても、気づかないのではないかと思える程の人の群れです。顔を見て息子を探し出すのは無理なのに気づきました。
そう考えに至ると、親でないと息子を探し出せないと思っていたのに、親でも見分けがつかないと思い知らされたのです。私は池袋駅前に戻り、暫く突っ立っていました。日が暮れて来ると信号待ちしている人の数がどんどん増えて来る様でした。
私は地下道に入り、西武百貨店の入り口辺りに来た時に気付きました。そこは少し高くなっていたのでした。ずーっと東武百貨店の方まで真っ直ぐ人の頭が見通せます。通りの真ん中の地下鉄丸の内線からも人が出て来るので、複雑な動きをする人の頭の流れです。
「 白い帽子を探せばいいのか! 」
息子を顔で見分けるのではなくて、白い帽子をまずは見つければ息子を識別し易くなると気づいたのでした。もう息子は帽子を被っていない可能性もありますが、そもそも東京にいないかもしれないのです。可能性が高いので割り切って来たのでした。
そういう意味では小雨が降っているので、息子は白い帽子を被っている可能性は十分あるわけです。
私は双眼鏡を持ってきたので、そこから人の頭をのぞいてみました。肉眼で白い頭を見つけたら、双眼鏡を使えば息子を識別できるのが分かりました。それが分かっただけでも大きな収穫です。この大都会で息子を見つけ出す方法を掴んだのですから。
やはり実際に家出人の捜索をしてみないと分からない事があるという事が分かりました。
「 来てよかった。 」
足が痛くてしかたありませんでしたが、私はそう思いました。
私はまだ歩きました。東武デパートの方、西池袋の方にも行ってみました。東京芸術劇場の前から歌声が聞こえてきました。ステージの上で女の子たちが踊っていました。ユニット名が肉汁ガールズなのですって。私は彼女たちよりも、見ている観客の方に注意を向けました。
若い人が多かったです。そこに息子の後姿があってもおかしくない気がしていました。
私はロッテリアでアイスコーヒーを注文して喫煙席に座って休みました。脹脛が痛くなって座りたかったのでした。マクドナルドはまだ席が混んでいました。ゆっくり休めそうにありませんでした。それで10時半で閉まってしまうロッテリアに辿り着いたのでした。
それでも禁煙席は一杯だったので、たばこの煙を我慢して喫煙席で休憩しました。
外は雨が強まって来ました。本日はこのまま池袋で泊まるつもりでいました。路上で寝ている人たちを見て、ネットカフェや漫画喫茶に行く予定です。
一日、都会の街中で過ごすのは疲れるものです。のんびり屋の息子には合わないと思えます。体を休める場所を探すのにも困る気がします。私は夜が更けていくのを待ちました。
家出息子捜索日記
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- まだ息子の帰りを待つ段階
- 失踪8日目に、息子へ送ったメール
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