私は息子の捜索を早朝に行う事にしました。体力的に東京を歩いて回れる時間は限られてしまいます。見つかられる可能性が高いのは、人が少ない早朝と判断たからです。
所持金も乏しくなっているだろうから、早朝、体を休めるのに、山手線をグルグル回っているのが最も経済的に思えました。そこで私は宿泊している実家を始発電車に間に合う様に出て、山手線の車両の中を探す事にしました。
小雨が降り、まだ8月だというのに、すっかり秋の肌寒さです。これならば公園にいるよりも、電車の中の方が快適の筈です。国鉄の入場券は140円です。今の息子にとってはきっと高額かもしれません。
私は最後尾の車両に乗り、先頭車両まで車内を歩いて行きました。思っていた通り、早朝の車内には爆睡している乗客が何人も目に留まりました。大きな口を開けて寝ている人、座席に倒れる様にして横になって寝ている人、車内はきっと快適なのでしょう。
私は山手線右回りに運行する電車を10本調べ、今度は反対方向の左回りを行く電車を5本調べました。もう9時を過ぎると、新しく車庫から出てきた電車も多くなってきました。疲労も限界に達したので、本日の捜索を打ち切る事にしました。
のどが渇いたのでコンビニに立ち寄りました。息子が唯一働いた事があるのがコンビニの店員です。お店の前にアルバイト募集と大きく書かれていました。
「 運良く、ここで働いてはいまいか? 」
店員を見ましたが、息子ではありません。よく考えればコンビニが家出人を雇う様なことはないでしょう。
やはり体力的には午前、10時までが限界の様です。私は暫く池袋の駅前に立ち、行き交う人々の中に息子がいないか見ていました。でも、無駄なことをしている徒労感に襲われ耐えられなくなりました。痛くなった足を動かし、実家に戻りました。
翌朝も、私は早起きをしました。私は同じように山手線の車両を捜索するつもりでいました。今度は、左回りに運行する電車を中心に車内を見て回るつもりでいました。
昨日の様子では、早朝、車内で睡眠を取るつもりで家出人が電車に乗り込む可能性は高いと思われます。しかし、息子が居るという手ごたえは全くありませんでした。
無駄なことをしているという気がしてなりませんでした。それでも今朝も歩き疲れに行こうとしていたのでした。
出かける準備が出来て、そろそろ出て行こうとしている時に、私の携帯電話が鳴りました。
「 こんなに朝早く、誰だろう? 」
妻からかもしれないと思いました。妻は昨夜からキャンプに行っている筈です。キャンプ仲間に息子の家出について相談したのだと思います。息子を見かけたという話でも聞いたのでしょうか?
表示されている電場番号を見ると、市外局番が、0465 になっています。見知らぬ番号でした。電話に出ると、神奈川県の小田原警察署からでした。
家出息子捜索日記
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