小田原警察署から外に出て、私は振り返って息子に言いました。
「 ちょっと、ここに座れよ。 」
私に叱られるのを怖がり、距離を置いてた息子を階段のステップに座られました。息子の赤いバッグを手元に引き寄せ、中を良く見ました。本当に紙ごみだけで、何もありません。
「 お金はどうしたの? 」
家出の間、過ごしたお金はどうしたのかと問うたのでした。息子は特にお金を持たずに家を出たと言います。高校卒業後にしていたバイト代は持っていたのだろうと思ったら、それは家出する前に早々に使ってしまったのだと言います。
「 でも、少なくとも定期代のおつり、9千円は持っていた筈だよね。 」
「 それは母さんに返した。 」
「 母さんは返してもらってないと言っているよ。 」
まだ何か言おうと息子は口をモゴモゴさせていました。
「 もう、嘘言うのは止めようよ。散々、嘘ついてきたのだから。 」
この期に及んで、まだ嘘を言おうとしている息子が可愛そうに思えました。そして私から息子がついていた嘘をばらしてやったのでした。
コンビニのアルバイトを3月でやめていた事、奨学金の申請書類を出していなかった事 ・・・
「 台風の日、コンビニまで車で送ってやったのに、バイトなんかしていなかったのだよね。 」
「 ・・・ 」
「 さぁ、もう嘘はやめようよ。 」
そして、タンスから4万円ほど取った事を確認すると、息子は素直に認めたのでした。それが家出の資金になっていたのでした。
「 でも、9円しかなくなって、どうするつもりだった? 」
息子の話を聞いて、つい私は笑ってしまいました。お金がなくなったので家に帰るしかないと思うのではなく、これから金持ちに拾われて、助けてもらえるかもしれないと考えていたのだと言います。
9円しかもっていないのにまだ家出を続ける気でいたとは!
馬鹿で哀れな息子 ・・・
私は顔を覗き込むと、痩せて頬がこけたので幼い頃の顔つきをしていました。
そこに警察署から警察官が2人出て来ました。
「 話がある様なら中でしてはどうですか? 」
そう言ってくれたのでした。私たちは警察署の入り口の前に座って居たのでした。迷惑だったのでしょう。
確かに警察署の前で地べた座って居るなんて、ちょっと見ない光景です。
私はどこか食事が出来る場所がないかと尋ねると、ファミレスが直ぐ近くにあると教えてもらいました。そこで二人して立ち上がって朝ごはんを食べに向かいました。
家出息子捜索日記
- 失踪当日の出来事
- 息子の嘘のバイト
- 再び嘘をつかなければならなくなった息子
- 行方不明者の届け出
- 家出の手がかり 自転車防犯登録番号
- 息子の自転車を探す
- 自転車発見! 家出の足取り
- 銀行口座の取引履歴を調べる
- どうしてお盆に失踪したのか?
- 個人情報保護法の壁
- 緊張はピークに 息子の失踪から5日目
- 真夜中の東京を家出人の捜索
- 留守録への期待
- まだ息子の帰りを待つ段階
- 失踪8日目に、息子へ送ったメール
- ハローワークが家出や失踪をし易くしている
- 高額の嘘 奨学金の申請
- 失踪者は何をしているのか?
- 失踪者の捜査権がない
- 家出の原因は父親の欠点
- 家族も、学校も、全てを捨てて
- 家出の話をすると気が楽に
- 東京へ家出人捜索に出発
- 家出人捜索開始 池袋にて
- 眠れなかった池袋の漫画喫茶
- 息子の捜索、早朝の山手線を
- 家出人の発見 息子に会いに小田原へ
- 家出息子を警察から引き取る
- 家出の資金4万円が9円になっても
- いよいよ家出息子が帰る時